ヨーロッパなら国境をとっくに越えている。夕方の「こまち」で秋田へ向かう。駅前で買ったあずきの味のする和菓子「もろこしあん」を口にしていると、一〇分ほどで大曲。この駅では進行方向が逆になっての出発となる。車掌が「座席の向きを変えましょう」とはいわないので、向きを変える人変えない人まちまちである。こういう状態はちょっと困るのだが、幸いすぐ後ろの席は空になったので遠慮なく座席をターンさせた。列車は複線の線路の右側を走る。まるでドイツみたいに右側通行だが、実は在来線の奥羽本線と秋田新幹線が単線で並列となっているためだ。線路幅の異なる線路が並んでいるので理屈では列車の並走も可能だ。しばらく平野の中を走る。知人の実家のある刈和野を通過し、やがて山間部にさしかかる。山並みが迫ってきたせいもあって、あたりは暗くなり景色は見えなくなってくる。平地に出てもネオンが少なく、ラストスパートもかけないうちに三〇分ほどで秋田到着である。